脊髄振盪「せきずいしんとう」とは? 一過性の脊髄損傷

頭部への外傷・振動後の一過性の意識消失・障害を伴う脳震盪「のうしんとう」は有名ですが、脊髄振盪についてはあまり知られていないです

以下、脊髄振盪「せきずいしんとう」のまとめ

目次
定義
症状
脊髄振盪分類
原因
治療
脊髄振盪関連文献の要旨



定義:論文・文献などから

英語では、「spinal cord concussion or neurapraxia」 
concussion:振盪 neurapraxia:一過性神経伝導障害、神経ブロック

持続時間:数分~72Hまで(論文により48Hであったりする)

日本の脊椎学会の定義
日本脊椎脊髄病学会の定義:脊髄に対して器質的障害を及ぼさない程度の外力が加わった直後に発生する一過性の脊髄機能障害。数秒から数分、ときには数時間で元に復す(脊椎脊髄病用語辞典)

日本救急医学会では、脊髄損傷の一部として扱われている
「脊髄損傷は脊髄振盪spinal concussion,脊髄圧迫spinal compressionおよび脊髄挫傷spinal contusionに分類される。」

1879年に初めて報告された
脊椎にはダメージ認めない、一過性の麻痺

200以上の症例報告があり、110人がスポーツ活動中に発症
→論文報告されているものは、海外のスポーツ外傷、若年者によるものが多い


臨床症状
伸展/屈曲、軸位方向の外力による脊髄の障害
症状は、知覚障害~四肢麻痺状態まで含まれる。
神経障害のでるのは、片側性、両側性、下肢、上肢、上下肢と様々

症状は、通常は速やかに完全に改善する

脊髄振盪の分類
脊髄振盪は、症状により
「完全麻痺 plegia」
「不全麻痺 paresis」
「知覚異常 paresthesias」
に分類される
また改善に要した時間も分類に考慮される
Grade 1 :15分以内
Grade 2 :15分から24時間以内
Grade 3 :24時間以上
48時間経過しても改善ない場合は、通常は永続的な麻痺が残存する。脊髄挫滅が疑われる


原因
外力および先天性/後天性の脊柱管狭窄が原因と考えられている
Torgらの報告:脊髄振盪患者の多くは、先天性の脊柱管狭窄、癒合や不安定性、椎間板障害を伴っている

Parkinsonらは、、ラットの背骨に衝撃を落とすことで神経麻痺を発生させ、30分で完全に改善する兆候があることを報告している

脊髄への伸屈曲が発生することで脊髄神経組織内の電解質異常が発生する可能性がある。
外力による細胞の破壊は免れるが、一時的な細胞内カルシウム濃度が増加するため、脱分極でできなくなり麻痺症状・神経伝導障害が起きる可能性がある


治療
報告例の多くはアスリート選手であり、頚椎の狭窄を伴う症例が多い
Bailesの報告:手術なしの10例の報告 40%でフットボールに復帰して再発なし

Torgの報告:110例中12例で手術が必要であった。110例中の63例(57%)がコンタクトスポーツに復帰。63例中35人(56%)が2度目の脊髄振盪のエピソードが発生

頚椎の脊髄振盪患者を診た場合
脊椎固定・安定化
CT 頭部からTh1までの
MRI

コンタクトスポーツなどへの復帰例では、56%で同様の症状を再発している


関連文系
「頚椎脊髄振盪 分類、病態生理、治療ガイドライン」
Cervical cord neurapraxia: classification, pathomechanics, morbidity, and management guidelines
J Neurosurg 87:843–850, 1997


110人の頸部の脊髄振盪について調査
109人が男性 1人女性
平均年齢21歳(13-33歳)
すべてスポーツ中に発生
87%がフットボール中
平均3.3年のフォロー

側面レントゲン像で脊柱管径が狭いと脊髄振盪のリスクとなる
頸部の脊髄振盪は、永続的な麻痺には関与していなかった。
またコンタクトスポーツに復帰した例でも永続的な麻痺発生例はなかった。

コンタクトスポーツ復帰例中、35人(56%)で再度脊髄振盪が発生していた。

脊柱管径/椎体長の比が小さい症例、椎間高位の脊柱管径が小さい例、硬膜管径が小さいことが、再発のリスク因子だった。

頚椎脊髄振盪は、一過性の神経障害であり、もとの競技に復帰しても、永続する脊髄損傷のリスクにはならない
先天性/後天性の頚椎側面像での頚椎脊柱管狭窄は、脊髄振盪のリスクとなる
再発率は56%
頚椎側面での脊柱管径と再発率には相関性がある。



参考
Spinal cord concussion in a professional ice hockey player Case report
J Neurosurg: Spine / Volume 14 / May 2011
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21332276


Cervical cord neurapraxia: classification, pathomechanics, morbidity, and management guidelines
J Neurosurg 87:843–850, 1997
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9384393


Cervical neurapraxia in elite athletes: evaluation and surgical treatment
J. Neurosurg: Spine / Volume 6 / April, 2007
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17436927




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